粉末技術と包装が変えたもの
抹茶を手軽にするという発想は昔からありました。実現できるかどうかは、技術の問題でした。
1930年、真空缶詰
宇治抹茶にグラニュー糖を合わせた粉末が、業界で初めて真空缶詰にして売り出されたのが1930年とされています。
真空にする意味は、酸素を減らすことです。抹茶の緑色はクロロフィルという色素によるもので、空気に触れると分解して褐色へ近づきます。香りの成分も揮発します。
粉末は葉のままより表面積が大きく、この変化が速く進みます。密閉技術がなければ、そもそも商品として流通させられません。
冷蔵庫が需要を作った
昭和30〜40年代、家庭用冷蔵庫が普及します。
氷が手軽に使えるようになり、冷たい飲み物の需要が伸びました。粉末を水に溶かして冷やす、という飲み方が現実的になったのはこの時期です。
技術が先にあっても、使う環境がなければ広まりません。
溶けやすさの工夫
粉を粒状にまとめる造粒という加工があります。
細かい粉は水に触れた表面だけが固まり、内側に水が入らずダマになります。粒がある程度の大きさを持っていると、水が内部まで入り込めます。
インスタントコーヒーの粒が細かい粉ではないのは、同じ理由によります。
包装材の進歩
アルミ蒸着の袋は、光と酸素を通しにくい素材です。抹茶が透明な袋で売られていないのは、光で色が落ちるためです。
脱酸素剤や窒素充填も使われます。いずれも、開けるまでの間の品質を保つ技術です。
個包装という選択
スティックタイプは、一回分ずつ密封されています。開封後の劣化という問題そのものが起きません。
濃さは固定されますが、持ち運びやすく、湿気の心配もない。使う場面によっては、大袋より合理的な形です。
変わっていないこと
石臼で碾茶を挽く工程は、いまも速くできません。摩擦熱が出ると香りと色が損なわれるため、1時間に挽ける量は40g程度とされています。
包装や配合の技術は進んでも、原料を作る部分は時間がかかったままです。
