碾茶はなぜ揉まないのか
煎茶の茶葉は細長くよじれた形をしています。あれは揉んだ結果です。
碾茶は揉みません。ここが製法上のいちばん大きな分岐点になります。
揉む目的
煎茶を揉むのは、湯に浸したときに成分が出やすくするためです。
揉むことで葉の組織が壊れ、細胞の中身が外に出やすくなります。同時に形が整い、かさが減って扱いやすくもなります。
浸出して飲むお茶にとって、揉みは必要な工程です。
揉まない理由
碾茶は最終的に粉にします。粉にしてそのまま飲むので、湯に成分を出す必要がありません。
揉む工程は省けます。むしろ揉まないほうが都合がよい。組織を壊さずに乾燥させたほうが、香りや色が保たれるためです。
蒸したあと、葉を広げたまま乾燥炉を通します。仕上がった碾茶は、平たく乾いた葉の形をしています。
そのあと選別する
乾いた葉から、葉脈と茎を取り除きます。
これらは硬く、石臼で挽いても細かくなりきりません。残っていると、雑味やざらつきの原因になります。
葉肉の部分だけを残す。この選別を経たものが、抹茶の原料としての碾茶です。
同じ木から別の茶ができる
覆いをかけるか、蒸したあと揉むか、揉まないか。この選択の組み合わせで、同じ茶の木から違う茶ができます。
| 覆い | 揉む | 飲み方 | |
|---|---|---|---|
| 煎茶 | なし | 揉む | 浸出 |
| 玉露 | あり | 揉む | 浸出 |
| 碾茶(抹茶) | あり | 揉まない | 粉ごと |
玉露と碾茶は、覆いをかけるところまで同じです。分かれるのは揉むかどうか。
飲み方まで規定している
揉まないという選択は、そのまま飲み方を決めています。
碾茶は揉んでいないので、湯に浸しても成分があまり出てきません。粉にして飲むことが前提の茶葉です。
逆に言えば、抹茶を「淹れる」ことはできません。溶かして、葉ごと口にする。製法の段階からそう設計されています。
